第104回全国高校野球選手権大阪大会は、圧倒的な強さを見せつけた大阪桐蔭高校の優勝で幕を閉じました。朝日新聞大阪販売は今回、配達区域内で希望のあった13チームを取材しました。その中で、上宮高校が5年ぶりに準決勝進出。大阪桐蔭に敗れたものの、甲子園まであと一歩に迫る戦績を残しました。今夏、上宮はなぜ強かったのか? その理由を探ります。
大会前取材は6月27日、場所は大阪市天王寺区上之宮町の同校教室で行いました。通常ならグラウンドでの様子を撮影すべきですが、練習場は太子町の上宮太子高校グラウンドで遠方だったのと、タイミングも合わなかったため、このような形を提案しました。
副部長の小川さんは「学校の地元の方は、部員たちの練習着やユニフォーム姿を見慣れないので、あえて制服姿を掲載して、顔を覚えてもらえる機会になれば」と、前向きに取材をセッティングしてくれました。

教室で待っていたのは、3年生全員と、背番号を受けた2年生たち。みんなキチンと並んで席に座り、背筋を伸ばして「こんにちは!」。まるで授業に臨む教師のような私。もっと、くだけた雰囲気を想像していたのに。
「それでは、おかちんさん(私)、後はご自由に」と笑顔で引いてしまった小川さん…。それは無茶ブリというものです。正直、「すみません!」って、教室を出ようかと思いました。でも、部員たちの顔を見渡せば、山田西リトルウルフOBの西森君や、津雲台少年野球クラブOB(実はおかちんも津雲台OB)の山元君ら、北摂の知った存在が、緊張をほぐしてくれました。
そこで、せっかくホワイトボードがあるのだからと、異例の講義風取材をスタート。ランダムに部員を指して、「夏の目標」「セールスポイント(自己分析・他己分析)」などを質問しました。
その中で、最も印象に残ったのが、3年の瀧野君。二塁手ですが、最後の夏は2年の後藤君にレギュラーを譲りました(奪われた? 言葉の選択って難しい)。


強豪チームにあって、もしかしたら出番がないかもしれない控え選手。ちょっと厳しいかな…と思いつつ、ぶつけた質問は、
「二塁手の魅力というか、やりがいを教えてください」
別のチームでも、同じような質問をしたことがあります。大抵の答えは「6―4―3のゲッツーを決める時が最高!」とか、「セカンドで盗塁を、バシッ!と補殺したとき」など。
でも、瀧野君は違いました。
「僕は、バッターが振り逃げで一塁に走ろうとした時などに、一塁手のカバーができるところが、二塁手のやりがいだと考えています」
意外な答えに、私は目頭が熱くなりました。

取材を終え、正門まで送ってくれた小川さん。
「まさか、瀧野があんなことを言うとは思いませんでしたが、このチームはレギュラーであってもなくても、背番号がない3年生部員も、1つになっているように思うんです。そういう部分でもこの夏は期待しているんです。おかちんさん、そんな部員も、ぜひ取り上げてやってください!」

今回、13チームをわずかA3用紙両面にまとめることになり、文字数はかなり限られていました。そんな中で果たして、主力選手紹介のスペースを削ってまで、控え選手のエピソードまで掲載することが妥当なのか。また、短い文章で、チームの思いを伝えることができるのか…。
そんな風に悩みながら、翌々日、この夏最後の取材チーム、箕面学園の茨木グラウンドを訪ねました。
(つづく)